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理事の想い(北西剛)

わたしの母ががんをわずらった。手術、放射線、抗がん剤、いわゆる3大治療を受けた。副作用にも耐えて、治療を続けた。あれから30年。現在は再発もなく、元気にすごしている。

わたしの父が小脳出血で倒れた。長期間の入院。その後、リハビリを経て、現在は日常生活にはほとんど支障なく、すごしている。

あらためて、両親の命を救ってもらった西洋医学のちからに感謝している。

医師免許を取り、耳鼻科医の道を選んだ。あるガン患者さんを治療した。手術をして、放射線治療を行い、抗ガン剤で治療をした。しっかりと治療ができたと思った矢先、遠隔転移が見つかった。結局その患者さんは、耳鼻科での治療を終え、緩和ケア病棟へと移ることになった。昨日まで耳鼻科で治すための治療を受けていた患者さんが、今日からはガン疼痛を取り除くことだけが目的に変わった。何もできない自分自身に無力感を感じた。

ある日、診察にこられた耳鳴りの患者さんが、
「どこの病院に行っても治りません。毎回同じ薬が出るだけです。先生の病院が19件目です。」
と話してくれた。その数に驚かされた。何もできず、ただ同じ薬が処方される診察を目の当たりにして、治療法もなく戸惑う目の前の患者さんに対して、自分には何ができるのか、を考えさせられた。

めまいを訴える、ある患者さんが、通院中の病院で処方されている薬を見せてくれた。1つの病院から処方されている薬の数は、29種類だった。患者さんが症状を訴えるたびに薬が増え続けていったのだろう。何も考えずに、ただ薬を出し続ける診察に疑問を持った。その患者さんは、何度も大学病院に通って、原因を見つけるために、たくさんの検査を受け続けた。最後に主治医から言われたことばは、
「検査は異常なし。心の問題です。耳鼻科の病気ではありません。」

両親のいのちを救ってくれた西洋医学は素晴らしい医学だと思う。そういった体験を持つ私から見ても、西洋医学では、こころとからだは別のもの。検査をすれば病気の原因がわかる、病気の診断ができる、検査で異常がなければ病気とは呼ばない、そういう考え方が主流だ。病名とは、ヒトが勝手に、便宜上、似た症状をしめす患者さんを分類しているだけにすぎない。症状や検査結果が同じであれば、同じ病名で呼ばれ、個々の差は考慮しない。男女差、左右差、体格差、いつ発症したのか、症状が天候の影響を受けるのか、…。そんなことは一切考えずに、病名という分類でのみ、治療法が決定される。
西洋医学での診断とは、決められた狭い範囲から、病名を決めること。西洋医学での治療とは、限られた中から選んだ病名に適した薬を使うこと、手術をすること。ほんとうにそれで患者さんの症状は改善されるのか?患者さんが苦痛から解放されるのか?もっとできることがあるはずだ。異なる方法で。

治療に関しての視野を広げよう。もっと多くの治療の選択肢を提案しよう。でも、自分でできることにも限界がある。幅広い職種との交流を広げて、診療に取り入れよう。これがきっと、悩みを抱える患者さんのためになるはずだと。統合医療とは、西洋医学と代替医療の統合だけでなない。医師と患者さん、ヒトと自然、すべて統合しなければ意味がない。

こうした取り組みは、目に見える形で効果があらわれた。

漢方で長年の不調が改善した患者さんがいた。ホメオパシーが奏を功した患者さんがいた。ヨーガで症状が楽になったという患者さんがいた。すすめたアーユルヴェーダが気に入って、アーユルヴェーダを求めてインドにまで渡った患者さんがいた。食を改善し、腸内環境を調えて、病気が治り、手術の必要がなくなった患者さんがいた。プラセンタが劇的に効いた患者さんがいた。バイオレゾナンスのハーモナイズで症状から解放され、感謝してくれた患者さんがいた。森林セラピーのアーシングに参加してくれた患者さんは、80歳をこえてまだまだ元気。アロマセラピーで…。鍼灸で…。カイロプラクティックで…。挙げればきりがない。これらはみんな、西洋医学では歯が立たなかった、西洋医学では見捨てられた存在の患者さんたちだった。

すべての病気の原因がわかり、あらゆる病気の治療法が確立されるのでは、といわれていたヒトゲノム計画。しかし、ヒトのすべての遺伝子がわかっても、すべての病気やその治療法がわかることはなかった。今度は、ES細胞、iPS細胞、MUSE細胞、遺伝子治療、ゲノム編集、先制医療…。センセーショナルなことばが躍る。これさえあれば、今度こそあらゆる病気が治せるのか。

センテナリアン=百寿者の調査からわかったこと。大切なのは、生きがい型満足感やひととのつながり。逆に、臓器が元気でも長生きとは限らないことがわかった。個々の臓器を治すことだけにとらわれていると、まさに“木を見て森を見ず”、“臓器を見てヒトを見ず”になる。

日本ホロス臨床統合医療機構では、講座を通して臓器・診療科・職種をこえた学び、交流を得てもらいたい。それを各持ち場で活かしてもらいたい。広がった交流から基礎・臨床分野で、ともに研究したい。そう考えています。

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